横浜地方裁判所 昭和60年(ワ)2315号 判決 1988年12月23日
原告 鈴木玲子
右訴訟代理人弁護士 伊藤伴子
被告 勝原英機
<ほか一名>
右被告森訴訟代理人弁護士 森英雄
鈴木質
水地啓子
橋本吉行
主文
一 被告らは原告に対し、各自、金一一七八万二六四六円及びこれに対する昭和六〇年五月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は被告らの負担とする。
四 この判決は、一項及び三項に限り仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告らは原告に対し、各自、金一二三五万七二一六円及びこれに対する昭和六〇年五月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 主文三項と同旨
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
(被告ら)
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 訴外ナショナル信金株式会社(以下、「ナショナル信金」という。)は、宝飾品、貴金属の仕入、卸、販売及びリース業等を目的とする会社であり、被告勝原英機(以下、「被告勝原」という。)は昭和六〇年五月七日まで右会社の代表取締役であったもの、被告森文雄(以下、「被告森」という。)は同年七月四日まで右会社藤沢支店営業担当社員であったものである。
2 ナショナル信金は、豊田商事株式会社(以下、「豊田商事」という。)の横浜支店長であった被告勝原が豊田商事の元社員四三名を引き連れて設立した会社である。
その商法は、豊田商事のそれをそっくり模倣した金のペーパー商法であり、まず、通称テレフォンと呼ばれる女子社員が電話で連絡を取った顧客に対し、営業担当者が顧客の自宅まで押し掛けて金の購入を勧誘し、取引が成立すると金の現物の準備のないまま、書面上純金の売買契約を締結し、顧客から右売買代金を受け取るとその場でナショナルワイド契約と称する金の賃貸借契約(契約期間一年)を締結し、顧客には金を引き渡さずにただナショナルワイド契約証書を交付するとともに、金の半年分の賃借料(売買代金の四・七五パーセントの金員)を前渡する仕組(以下、「本件商法」という。)となっている。右契約書には契約期間満了時に金または金相当額の現金が支払われるとの記載があるが、かかる商法により受領した金員は、大半が被告勝原の経営する訴外英雅物産株式会社(以下、「英雅物産」という。)においてスナック、大衆酒場、マージャン屋等の資金として費消されており、金または現金の償還は不可能であった。
3 被告森の原告に対する勧誘行為
被告森は、昭和六〇年二月二七日原告方を訪れ、原告に対し、「来年二月から税金制度が変わり、預金を子供名義にしておくと税金がかかる。ナショナル信金の商品では利息が年九・五パーセントになり、しかも年二回の利息先払なので銀行預金よりはるかに有利である。」と金の購入を勧誘し、倒産を気遣う原告に対し更に、「倒産しても返金保証があるから大丈夫である。」と説明し、その旨信用した原告から後記金員の交付を受けた。
4 被告勝原は、本件商法を立案した者であり、前記勧誘を実施させた。
5(一) 被告森は、昭和六〇年二月一日ナショナル信金に営業担当者として入社したが、同社には営業担当者として契約の締結を勧誘する従業員は多数存在するが、純金購入、資金運用部門が存在しないこと、同社藤沢支店だけでもテレフォン(女子社員)五〇名、営業担当者一五名が勤務しその固定給、歩合給の支払だけでも莫大な経費が必要となるのにその資金は顧客から集めた金の売買代金で賄うほかないこと、のみならず右代金が英雅物産に流用されて費消されていること、したがって賃借料や賃貸借期間満了時の金ないしその相当額の現金の返還は、新たに集めた顧客からの金の売買代金で賄うしかないことなどを知りつつ、あるいはこれらを知りうべきであったのにこれを怠り、原告に対し前記勧誘行為を行ったもので、故意または過失がある。
(二) 被告森は、家庭の主婦で金の取引には全く無知である原告が、同被告の名刺を見て金の売買の勧誘ではなく、あたかも高利回りの預金類似の商品の勧誘であると誤信しているのを知りながら、その誤信に乗じて前記勧誘行為を行った。
6 原告は前記勧誘行為により、ナショナル信金に対し、金の売買代金及び右売買契約手数料名下に左のとおりの金員を交付し、同額の損害を蒙った。
(一) 昭和六〇年二月二七日 二五二万七五六〇円
(二) 同日 二五二万七五六〇円
(三) 同年二月二八日 二五三万六七四〇円
(四) 同年三月二九日 四二一万二〇四〇円
(五) 同年四月三日 二七万六五五五円
(六) 同年五月六日 二七万六七六一円
合計 一二三五万七二六一円
7 よって、原告は被告ら各自に対し、それぞれ不法行為による損害賠償請求権に基づき一二三五万七二六一円及びこれに対する最終の不法行為の日である昭和六〇年五月六日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否及び被告の主張
(被告勝原)
1 請求原因1の事実を認める。
2 同2のうち、被告勝原が元豊田商事の横浜支店長であったこと、金の売上金の一部を英雅物産に投入したことを認め、ナショナル信金の商法が豊田商事のそれを模倣したものであること、金の準備をしていないことを否認する。
ナショナル信金の商法には二種類あり、顧客の希望により、金の現物売買を行う場合と、金の引渡を行わず同社が金を賃借しナショナルワイド契約を結んで金の賃借料年九・五パーセントを顧客に支払う場合とがある。原告は後者を希望した。
ナショナル信金では昭和六〇年五月ころまで、金を購入して中途解約や満期解約を申し出た顧客に金または現金を返還しており、その引延しを図ったことはない。
また、ナショナル信金が金の売上金の一部を英雅物産に投入したのは、売上金の運用益を得るためである。
(被告森)
1 請求原因1のうち、ナショナル信金の目的は不知、その余を認める。
2 同2のうち、ナショナルワイド契約の仕組自体(但し、それがペーパー商法であること、金の準備がなかったことを除く。)を認め、その余は不知。
3 同3のうち、被告森が原告主張の日に原告方を訪れ金の購入を勧めたこと、税金のことを除き原告主張の勧誘文言と同旨のことを言ったことを認め、その余は不知。
4(一) 同5(一)のうち、被告森が原告主張のころナショナル信金に営業担当者として入社したことは認め、同被告が原告主張の事実を知りつつ勧誘したこと、または、原告主張の事実を知りえたことを否認する。
被告森は、ナショナル信金藤沢営業所長古村から、本件商品の老後の利殖としての優利性について教育され、そのとおりの説明を原告にしたまでである。そして、原告に藤沢支店まで来訪してもらった際にも右古村がナショナルワイド契約の趣旨を説明し、原告の承諾を得て契約を結んだものである。同被告は昭和六〇年七月四日にナショナル信金を退社したので、同被告が勧誘した顧客に対して解約の手続をするまでには至らなかったが、右古村からは、顧客に対し、契約満期に金の現物を交付するか、その時価相当の現金を支払うとの説明を受けていた。また、勤務中顧客からナショナルワイド契約について苦情を言われたこともなかった。
以上のとおり、被告森は、本件商法については全く疑問を持っておらず、自らも義父や妻名義で約五三〇万円のナショナルワイド契約を締結した。
(二) 同5(二)の事実を否認する。
5 同6のうち、原告主張の金員の交付を受けたことを認め、右が損害であることは不知。
第三証拠《省略》
理由
一 請求原因1(ナショナル信金の概要、被告らのナショナル信金における地位)のうち、ナショナル信金の目的を除く事実についてはいずれも当事者間に争いがなく、右目的については被告勝原との間で争いがなく、被告森との間では《証拠省略》によりこれを認めることができる。
二 本件商法について
1 本件商法のうち、ナショナルワイド契約の仕組自体については被告森との間で争いがなく、被告勝原との間では、同被告は明らかに争わないからこれを自白したものと見做す。
2 《証拠省略》を総合すると、以下の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
(一) 被告勝原は、元豊田商事横浜支店長(右は被告勝原との間で争いがない。)であったが、昭和五八年一月末に右会社を退職し、同年四月ころ右支店の従業員四〇名ほどを引き連れてナショナル信金の営業を開始した。
(二) 本件商法は、豊田商事の勧誘方法と同様に、顧客に対し、純金がいつでも換金できること、無税であること、値上がりすることというメリットを強調して金の購入を勧めるものであり、この勧誘方法は被告勝原が立案したものであった。
また、顧客への金の売買方法としては、金の現物売買も皆無ではなかったが、その殆どは金の現物の引渡をせずに証書のみを交付し、その賃借料を支払うナショナルワイド契約を締結することにしていた。
(三) 被告勝原は、顧客から得た金員のうちから、事務所の賃借料、従業員の給料等の経費を控除し、残りの四、五割程度で純金を購入してナショナル信金で保有し、その他は同被告及びナショナル信金の役員が経営する英雅物産(居酒屋チェーン)や、株式会社ワールドジュエリー(宝石の売買を業務としていた。)の資金に運用するつもりであった。しかし、実際には金の保有は一割程度にすぎず、金の売買代金の大半は英雅物産等に投入されていたものであり、英雅物産等の経営が当初から行き詰まったこともあって、ナショナル信金の収支は終始赤字であった。
(四) 豊田商事への社会的批判が高まった昭和六〇年四月ころから入社する社員が減少し、また、豊田商事の永野会長が殺害されてからは顧客からの解約も殺到したため、ナショナル信金は同年七月倒産した。その時の負債額は約一〇億円であり、その殆どが顧客への未払返還金であった。
以上によれば、本件商法は、顧客に対してはナショナルワイド契約の締結を主体として金の売買を勧誘するものであり、勧誘を受けた顧客も前記勧誘文言からはそのように理解することが明らかであるところ、実際は、金の売買代金は、その大半が被告勝原が中心となって経営する関連事業への資金として運用されることを予定されていたものであるから、本件商法は、金の売買の形式をとってはいるものの、その実態は金を売ることではなく、事業資金獲得とその運用利益獲得を目的としたものということができる。したがって、本件商法は、まず、顧客に対し、売買代金を事業に投資することを当初から明らかにしない点において詐欺商法のそしりを免れないというべきである。
次に、金の取引は、金の価格が変動するが故に、安定した利殖手段というよりも投機的な利殖手段であることは公知の事実であるところ、本件商法は金が確実に値上がりするなどと申し向ける勧誘方法を会社全体で採用していたという点においても、詐欺商法であるというべきである。
そして、右のように、金の売買と賃貸借に藉口して顧客から得た金員を事業資金として運用しても利益が上がらず、その収支が当初から赤字の状態である以上、顧客に対し高利の賃借料を支払うことは本来無理であり、これを続けるならば早晩顧客に対し、契約期間満了時に金又は金相当額の金員を返還することが不可能となり、被害を与える結果となることは十分予見し得ることであって、この点において本件商法が詐欺商法であることは明らかというべきである。
三 被告勝原の不法行為について
被告勝原は、ナショナル信金の代表者として、右のとおり詐欺商法である本件商法を立案したうえ、後記のとおりナショナル信金の営業担当者である被告森に実行させたということができるから、右は不法行為を構成し、原告の後記損害を賠償すべき義務がある。
四 被告森の勧誘行為について
被告森が原告方を訪れ(但し、その日時については後記のとおりである。)、ナショナル信金に金を預けてくれれば利息が年九・五パーセントと高率であり、しかも半年ごとに利息の前払が受けられるから銀行預金よりも有利であることを述べて金の購入を勧めたこと、倒産を気遣う原告に対し政府の保証があるから心配ないと説明したこと、ナショナル信金が原告から、その主張の日にその主張の金員の交付を受けたことはいずれも被告森との間で争いがなく、右事実と、《証拠省略》を総合すると以下の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
1 被告森は、昭和六〇年二月二六日午後三時ころ原告方を訪れ、ナショナル信金の名刺を示して雑談を始め原告の預金額を聞き出した。同被告がその後、原告の子供名義の預金については税金がかかることを話したところ、原告が興味を示したので、ナショナル信金に預けた場合には税金がかからないこと、並びに前記のとおり利息が良く前払を受けられること及び金が値上がりすることを説明してナショナル信金に預金を預け直すように勧誘した。
2 その際、原告は、同被告の勧誘の趣旨が金の取引であるとは思っておらず、同被告の勧誘が午後七時ころまで続いたことや、税金がかからない、利息が良いと言われたことなどから、二人の子供名義の預金について同被告の勧めに応ずることにして、純金注文書及びナショナルワイド証書申し込書に住所及び原告の子である鈴木雅之、鈴木絵理の氏名等を記入して押印した。
3 翌日原告は、ナショナル信金の社員吉村とともに三菱信託銀行藤沢支店で前記二人の子の名義の預金を解約して払い戻し、引き続きナショナル信金藤沢支店において同支店長古村の説明を受けた。その際、原告は、ナショナル信金が潰れたらどうなるかと問いただしたところ、右古村は、政府が保証する旨述べたので、原告は安心し、前記二人の子の名義で各一〇〇〇グラムの金の売買契約及びナショナルワイド契約を結んで、金の購入代金各二四七万八〇〇〇円と手数料各四万九五六〇円合計各二五二万七五六〇円を支払い、半年分の利息(賃借料)として各一一万七七〇五円を受け取った。
4 更にその場で、前記古村及び被告森が、まだ預金があるなら利息の良いナショナル信金に預けるように勧めたので、原告は原告名義のナショナルワイド契約の申込をし、同年二月二八日ナショナル信金藤沢支店において一、〇〇〇グラムの金の売買契約及びナショナルワイド契約を結び、金の購入代金及び手数料合計二五三万六七四〇円を支払い、半年分の利息(賃借料)として一一万八一三三円を受け取った。
5 その後原告はナショナル信金が倒産するのではないかとの不安を覚え、数回同社に電話を入れたり、被告森に問いただしたが、前同様の説明を受けた。
6 同年三月二九日被告森は原告に対し、再び利息が良いからとナショナル信金との契約を勧めたので、原告は野村証券の国債ファンドを解約してナショナル信金に預け替えることにし、翌日一、五〇〇グラムの金の売買契約及びナショナルワイド契約を結んで、金の購入代金四一一万六〇〇〇円、手数料九万六〇四〇円合計四二一万二〇四〇円を支払った。
7 同年四月三日、被告森は右契約の利息(賃借料)一九万五五一〇円を原告方に持参したが、同被告は原告に対し更に利息の件を持ち出してナショナル信金との契約を勧めたので、原告は同日一〇〇グラムの金の売買契約及びナショナルワイド契約を結び、右利息(賃借料)及び原告名義の普通預金から金の購入代金二六万八五〇〇円及び手数料八〇五五円合計二七万六五五五円を支払い、利息(賃借料)として一万二七五四円を受け取った。
8 同年五月六日にも被告森は契約の勧誘をした。原告は既に生活費のための預金したなかったので断ったが、同被告がまたも利息のことを強く話すので、原告は一〇〇グラムの金の売買契約及びナショナルワイド契約を結び、金の購入代金二六万八七〇〇円、手数料八〇六一円合計二七万六七六一円を支払い、利息(賃借料)として一万二七六三円を受け取った。
五 被告森の責任について
1 本件商法の実態は、前記二に認定のとおりであるところ、《証拠省略》を総合すると、被告森は、ナショナル信金における研修でナショナルワイド契約の仕組について教育を受け、本件商法は形式上金の売買ではあるが、ナショナルワイド契約を主体とするもので金の現物を顧客に交付することは殆どしない旨指導されたほか、被告勝原や古村支店長らから朝礼の際などにナショナル信金の営業状態を聞き、金の売買及びナショナルワイド契約により顧客から受領した金員のうちから従業員の給料、事務所の経費等が支払われていること、ナショナル信金には資金運用部門を担当する社員は存在せず、売上金の多くは資金の運用と称して被告勝原の経営する英雅産業などの事業資金に使用されていること、ところが、右事業経営は順調ではなく、そのためナショナル信金の経営は赤字であることなど同会社の営業状況の概要を認識していたことが認められ(る。)《証拠判断省略》
また、《証拠省略》によると、本件商法と類似の詐欺まがいの金の取引により多くの被害が出ていることは、既に昭和五六年九月ころからしばしば新聞紙上に報道され警告されていること、同五八年一〇月には、ナショナルワイド契約と全く同旨の「純金ファミリー契約」と称する金の取引による被害者が豊田商事に対し訴訟を提起した旨、同五九年三月には豊田商事及びその幹部が告訴された旨の記事が新聞に掲載され、金の取引に藉口した詐欺商法が大きな社会問題として取り上げられていることが認められる。
以上の事実によると、被告森は、ナショナル信金の営業の実態及び本件商法と同様の詐欺商法である豊田商事事件の被害状況などから、ナショナルワイド契約により高利の賃借料を支払うことは本来不可能であり、顧客に対し右賃借料を支払い、契約期間満了時に金ないし金相当額の金員を返還するためには、新たに顧客から得た金員を充当することにせざるを得ず、結局、ナショナルワイド契約を主体とする本件商法が顧客に被害を及ぼすことは知り得べきであったということができる。
2 被告森の勧誘行為は前記四に認定のとおりであるところ、《証拠省略》によれば、原告は四三歳の家庭の主婦であり、亡夫の遺した定期預金とアパートの経営により生活していること、従前、金の取引をしたことがなく、原告所有のアパートの資金の調達や預金手続についてもすべて亡夫に任せきりであったこと、被告森の説明に対しても、原告は金の取引に興味を示さず、また、少なくとも金の価格の動向やナショナルワイド契約が金の売買とその賃貸借であること、利息に相当するものが賃借料であることについては十分理解していなかったこと、そして、被告森は、原告が右契約内容を理解していないことを認識していながら、右契約について正確に告知せず、利息が高く税金がかからないことを強調して執拗に勧誘したことの各事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
3 以上によれば、被告森は、本件商法が前記の如き詐欺商法であることを知り得べきであったにもかかわらずこれを怠り、かつ、原告がナショナルワイド契約の内容を十分理解していないことを知りながらこれに乗じ、利息が高く、税金がかからない有利な利殖方法であることを強調して原告を勧誘し、ナショナルワイド契約を締結させた点において、詐欺の故意ないし重大な過失があったものというべきであり、原告に対する不法行為責任を免れない。
尤も、《証拠省略》によれば、原告とナショナルワイド契約を締結したころ、被告森は義父にも同契約を締結させており、また、自らも長女や妻の名義で同契約を締結している事実が認められるが、右事実は、同被告の右不法行為責任に何らの消長を来すものではない。
六 損害について
原告は、前記被告らの不法行為により、前記四で認定したとおりの金員を交付しており、そのうち賃借料として原告が受取った金額を控除した額が右不法行為と相当因果関係にある損害と認められる。即ち、原告の損害は、
昭和六〇年二月二七日 二四〇万九八五五円
同日 二四〇万九八五五円
同年二月二八日 二四一万八六〇七円
同年三月二九日 四〇一万六五三〇円
同年四月三日 二六万三八〇一円
同年五月六日 二六万三九九八円
合計 一一七八万二六四六円
である。
七 以上の次第で、原告の被告らに対する本訴請求は、一一七八万二六四六円及びこれに対する最後の不法行為の日である昭和六〇年五月六日から各支払ずみまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九三条一項、九二条但書、八九条を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 蘒原孟 裁判官 樋口直)
裁判官小西義博は転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 蘒原孟